国の天然記念物に指定されている唐川のカキツバタ群落を訪ねた.開花に合うちょうど良いタイミングだったようだ.当地が指定されたのは昭和19年3月.そのような戦時色濃厚な時期でも粛々と手続きが進められていたのだろうかと不思議に感じられるが,もしかすると戦後しばらくのほうが色々な面で混乱が大きかったのかもしれない.
湿原の周囲を巻くように道があり,定期的に草刈りがなされているようだ.この管理がなくなれば周辺部から徐々に乾燥が進行していくかもしれない.
カキツバタ群落の上流には灌漑用の溜池があり,湿原の周囲の道は最寄りの集落とこの溜池をつないでいる.調べてみたところ,溜池は江戸の末から明治の初めにかけて地元出身の人が私財を投じて築造したもののようだ.カキツバタ群落の部分は盆地状の地形で過去に水田として開作されていても不思議ではないのだが,そのような履歴はないのだろうか.湿原全体を見ると比高が異なる場所があり,もしかするとそれは耕作の名残りかもしれない(違うかもしれない).
溜池から分けられた水路は等高線に沿う形で下流の耕作地に向かってなだらかに続いているようで,かつては開放型であったろうが現在はパイプに置き換えられている.湿原を涵養するためにパイプに穴を開けて水が浸透するような工夫が施してあると知ったが現地では確認することができなかった.
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